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風船の科学(きっかけ編) 

天高く馬肥ゆる秋。フッと空を見上げてみれば赤い風船が街灯に引っ掛かったままユラユラと揺れている。さらに下に目をやるとウーウー唸りながら街灯に登ろうとしているのは、なんだろう君。


やぁ、なんだろう君。こんなところで何をしているんだい?
久し振りにあったけれど、相変わらず不可解な行動をしているようだね。

なんだろう君
匝さん、久しぶりの再会の挨拶がそれですか。ボクはひっかかっている赤い風船を取って、いずれは恩返しをしてもらう予定なんです。


恩返し?誰の??まさか風船じゃなかろうね。

なんだろう君
知らないんですか?風船とお友達になると、その後、大空へ連れて行ってもらえるんです。


君はいったい何才なんだい?それはフランス映画の“赤い風船”だろう。あれだって、無事に帰ってきたかわからないよ。飛んでいくシーンしかないし、かの風船おじさんと同じように…

なんだろう君
そうそう、おじいさんやおかあさんのいる遠いお国へ行って、寒いことも、悲しいことも、おなかのすくこともなく、みんな一緒にいつまでも楽しく暮らせるんです。こんな不景気なところとおさらばできますよ。


どこかできいたフレーズだねぇ。
そこまでいうならあるかどうかわからない“恩返し”なんて当てにせず、自分で空に飛んでみたらどうだい?

なんだろう君
ええっ!どうやってですか?


その前にいいかげん降りてきたらどうかな。風船を取るなら、ちゃちゃっと。

なんだろう君
よいしょっと。風船も一緒に作戦会議ですね。


なんか疲れるなぁ。
ところでその風船はどうして浮いていると思う?それがわかれば半分飛べたも同然さ。

なんだろう君
馬鹿にしないでくださいよ。それは風船の中のガスの重さがマイナスだからです。


あっ!馬鹿がいた。まぁ厳密にいえば当たらずも遠からずだが、わかって言ってないので大外れだ。

なんだろう君
どうしてですかっ!天秤に風船のひもをつけて計ってみてくださいよ。マイナス何グラムって表示されますよ、きっと!


じゃ、丈夫で割れることのない風船があって、その風船のガスと同じヘリウムガスを入れるとしよう。これを空気のない月に持っていくとどうなるかな?

なんだろう君
重さはマイナスだから浮きます。


いやはや、科学少年と思っていたのだが、まだまだハナタレ小僧だね、君は。
地面…じゃない、月面に落ちるんだよ。

なんだろう君
ええっ!匝さんはボクを騙そうとしていますね。じゃ、何で浮いているんですか?秤で量ってもマイナスなんですよ。バシッと決めてもらわないと、気持ちよく飛んでいけません。


まだ飛んでいく気なのかい。
まずマイナスの重さというのが見せかけなんだ。重さに似たようなもので“質量”というのがある。最近は商品のカタログでも“重量”とは書かず“質量”と書いてあるはずだよ。

なんだろう君
“重さ”と“質量”って違うものなんですか?


もちろん。重さというのは重力の影響を受けている。だから月の重力は地球の6分の1しかないので、月面で計量すると60kgの体重の人も10kgしかないことになってしまう。

なんだろう君
じゃ、月に行けば大幅なダイエットができそうですね。うっしっし。


その怪しい笑いはやめなさい。でもそれは本当に体重が減ったというわけじゃないだろう。その人自身は何も変わっていない。鉄の塊だって6分の1の重さになってしまう。

なんだろう君
じゃ、質量はどうなんですか?


ここでいう質量は、動かしにくさっていうのかな。
たとえばお相撲さんを無重力の宇宙へ連れて行っても、体重計ではゼロになったとしても質量としての体重はあるんだ。だから、浮いているお相撲さんを子供が押したところでお相撲さんはそれほど動かない。下手するとお子さんの方がお相撲さんから離れてしまうこともあるだろう。

地球や月などでは重力という力が働くけれど、この力の強さが違うんだ。だから同じ質量のものでも重さとしては重力の力の強さで変わってしまう。

なんだろう君
なるほど。でも、無重力の世界にいったことがないのでわかりませんが、そういうことにしておきましょう。で、それと浮いている風船とどう関係があるんで?


うむ。とりあえず風船の中に入っているヘリウムガスには、重さに似た質量というものがある。だから空気のない月では月面に落ちてしまう。でも空気のある地球では浮いてしまうわけだ。ここにヒントがあるんだな、ふふッ。

なんだろう君
うわっ!嫌な微笑みですね。空気、ねぇ。
まさか空気の重さはゼロなのに、やはり風船に入れて月面の持っていくと落ちるとか言うんじゃないでしょうね。


その通り!そもそも空気の重さはゼロではない。

なんだろう君
そりゃ、その場の空気を読めずに変なこと言って、ズーンと周りが重たい空気に包まれることはありますよ。でもね、フタのないペットボトルの重さを量ってから、フタを締めてもう一度ペットボトルを量ってもフタの重さしか差がないんです。どうして空気に重さがあるというんですか?


いやいや、空気にも質量があるってことだ。それに後半の実験方法に誤りがあるようだね。
では、ちょっと話を変えてみよう。君はタコだ。

なんだろう君
タコって何ですか!失礼ですね。


いやいや、海の中では高等生物のひとつ…ってそんなことはどうでもいいんだ。
まず普通に考えて、同じサイズのペットボトルを2つ用意して、ひとつに水を、もうひとつには油を入れる。それぞれに重さはあるだろう?

なんだろう君
ありますね。


タコはヤダというので、キミがこのペットボトルを持っていったとして、プールに潜ってペットボトルを手から放すとどうなるだろう。

なんだろう君
油の入ったペットボトルは水より軽いので浮きます。水の入っている方はゆっくり沈むんじゃないかな。


そうそう。そのように考えられる。そしてもちろんそうなる。この時、水中でも使える秤があったとして、油の重さはマイナスになるんじゃないかな?

なんだろう君
うーむ。


水の入ったペットボトルも同じように水中で量るとフタを取っても取らなくても同じ重さになるはずだ。もっとも水中に入れる前よりも軽くなっているだろうけどね。

つまりさっきの月面と似たような現象が地球でもみられるのだ。水のある世界とない世界、空気のある世界とない世界。

みんな質量というものがあって、地上でも量るところが真空であれば質量と重さは一致するんだけれど、量るところが水中や空気中であると、なぜか質量と重さは一致しなくなるんだな。なんでかな?

なんだろう君
あれですね。


あれって?

なんだろう君
古代ギリシャでは、この原理を理解した者は、奇声を発しながら喜びの裸踊りをしなければならないそうじゃないですか。ボクはそんなはずかしいことできません。


それってアルキメデスのこと?また変な理解をしたもんだね。奇声って「エウレーカ」のことかい?
まぁ、答えいっちゃえば浮力だね。アルキメデスの原理。

なんだろう君
つまり、ヘリウムは空気より軽いから浮くっていうことですよね。


その通りだよ、なんだろう君。

なんだろう君
じゃ、空気の重さってどれくらいなんですか?全然、重さを感じませんよ。


いやぁ、慣れって恐ろしいもんだよね。生まれた時…、いや生まれる前から空気の重さに慣れちゃっているわけだ。だから重さを感じない。

天気予報で『今日の気圧は1013ヘクトパスカル』とかいうだろう。あれが空気の重さ、正しくは圧力という奴なんだよ。天高いところから地面までのすべての空気の重さと考えていい。そして低気圧だと圧力は低くなる。逆に高気圧だと圧力は高くなる。言い換えれば身体にかかる空気の重さは軽くなるんだ。もっとも圧力と重さは違うものだけれど、イメージとしてはそんな感じ。

なんだろう君
1013ヘクトパスカルってどれくらいの重さなんですか?


重さではなく圧力なんだが、1平方センチメートルに1.013キログラム。圧力なので地面だけでなく、すべての方向から均等に力がかかっているんだけどね。要は押しつぶそうとしているわけだ。身体は押しつぶされないように同じ圧力で押し返し、結果つぶれないんだよ。

飛行機とかに乗ると未開封のお菓子の袋が膨らんでいることがある。山もそうだけれど高いところにいくと空気が薄くなるので、その分圧力も少なくなり袋の中の空気が押し返す力が強くなるんだよ。

なんだろう君
そうか、だから長時間飛行機に乗っていると、みんな顔が膨らむんですね。


それは長時間身動きしないから、むくんでいるだけじゃないかね?

なんだろう君
ところで、さっきのペットボトルに入っている空気ってどれくらいの重さなんですか?
あれ?どうしたんですか?


ちょっとね。こう…トイレ、そうトイレに行こうと思ってね。ま、今日は君も風船と友達になる時間も必要だろうから、この続きはまた今度にしよう。

なんだろう君
逃げた…

【つづく】



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