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青い閃光―ドキュメント東海臨界事故 

青い閃光―ドキュメント東海臨界事故
青い閃光―ドキュメント東海臨界事故読売新聞社編集局

おすすめ平均
stars臨界が起きるシステムをこの本で知りました
stars新聞記者の限界点

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先に“朽ちていった命”を書いてしまったが、蔵書として古くからあるのは本書だ。

“朽ちていった命”でも書いたが、1999年に発生した日本初の臨界事故は、当時、政府もマスコミも混乱のうちに収束した。事故の発生原因は裏マニュアルでさえ守らなかったずさんな作業が原因で、ステンレス製バケツがやたらクローズアップされたのを記憶している。結局、どうやって臨界が止まったのか…。そんな疑問があって本書を購入したのだった。

本書のタイトルにある“青い閃光”とは、チェレンコフの光のことだ。
チェレンコフの光とは、電荷を帯びた粒子が物質の中で光の速度以上の速さで移動することで発光する光。光より速いモノはないのだがそれは真空中の話であって、水などの物質中では光もかなり遅くなる。そこに物質中の光より速い荷電粒子が通り抜けると衝撃で発光するのだ。

ただし今ではチェレンコフの光ではなく、電離した空気が発光したのではないかという説もある。
たとえば原子炉がむき出しとなったチェルノブイリ原発の上空が青く光っていたという話もあり、空気が放射線で電離したとも考えられているのだ。

YPC(横浜物理サークル):チェレンコフの光を見た
http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/labo/nsrr.htm
上のサイトではチェレンコフの光の動画をみることができます。

さて、本書だが、事故に至る作業から臨界終息。そして事故の捜査、提言と続く。
事故の一報から混乱がはじまり、事故現場のJCOでも何が起きたかわからない事態。駆け付けた救急隊員は二次被ばくする。臨界事故の可能性が村や県に報告されるも「なぜ、低濃度のウランしか扱わない会社で…」と皆、首を傾げる。そして村は村、県は県、科学技術庁と政府もそれぞれ対策本部を設けバラバラに動きだす。

村は最初に事故現場から半径350メートルを避難要請とする。県は半径10キロメートル以内の31万人に屋内避難要請した。屋内避難とは外の放射性物質からの放射線を避けるために危険な屋外から遮蔽物のある屋内に避難することだ。実際には放射性物質(放射能)は出ていないらしいが、金属容器の中は臨界状態で強い中性子線が放射され続けていた。

村や県、国が事故に翻弄される中、東海の原子力研究所(原研)では対策が練られ、次々に実行に移される。臨界を止めるために金属容器を取り囲む水を抜くための作業。核分裂を抑制するためのホウ酸水の注水。放射線を遮蔽するための土嚢積み。功を奏して2日半の臨界は終息する。

特に印象に残ったのは決死隊の投入だ。
原研は事故現場の状況を把握するために放医研に搬送されていた副長に連絡を取る。少ない情報ながら金属容器(沈澱槽)の形状を分析し、容器を取り巻く冷却水を排水すれば中性子線が外部に漏れ、核分裂ができなくなり臨界をほぼ止めることができると判断。水抜き作戦を起案する。

ただし誰が裸の原子炉の近くまで行くのか…。各機関は臨界終息への協力は惜しまない姿勢だったが、さすがにこの作業は当事者が行うべきとされた。苦悩するJCOの所長。誰にそのような危険を指示できるだろう。

独身者と作業に不慣れな管理職を除き、2名7組14名が決死隊として編成される。志願者も多かったと書かれている。

原研はさまざまな調査から被ばく量を計算するも実際の金属容器が排水バルブに近く、作業時間5分のところ近づいているだけで線量計のアラームがなるほどに強烈だった。20ミリシーベルトで設定してあった線量計は3分の作業で90ミリシーベルトを超えてしまう。この作業の緊迫感がとても印象に残った。また、所長が目を潤ませながら決死隊が出発する際に「お願いします」と頭を下げる姿に思いを巡らす。

結局、いくつかの複合要因で事故に至った。そのどれかが欠けていても事故は起きなかったかも知れない。

特注の濃度の濃いウラン溶液を扱っていなかったら。
作業員が臨界を防ぐために質量制限と臨界を起こしにくい形状制限を教育されていたら。
作業が大変だからと形状制限に従った設備で作業していたら。
沈殿槽で大丈夫か確認した際に、「大丈夫」だと同僚が返事をしていなかったら。
はじめての作業でなかったら。
同僚や作業者が低濃縮ウランと中濃縮ウランを勘違いしていなかったら。
会社がリストラしていなかったら。

作業手順書や安全確認などをいいかげんに取り扱うと、小さなことでも自分だけでなく、同僚、会社、そして地域社会へと大きな犠牲を伴うことがわかる。先にも書いたが、汚染米や中国のメラミン被害など企業ぐるみの酷い例もあるが、個人レベルでもポカミスでは済まないことが起きることを肝に銘じなければならない。また、教育がなされていれば個人でもやっていいこと悪いことが判断できる。自社で教育せずに安易に中途採用とか派遣社員を使用する例が多いように感じるが、教育することが会社の定着率と技術力をアップする一番の方法だと改めて考えさせられた。


2009-6-28
決死隊投入後、ロボットを使用すべきでなかったかという意見もあったようだが、強い放射線の中ではCPUはじめ半導体は壊れてしまう。これはチェルノブイリで実際にロボットを投入した時も動作しなくなった(日本製だったらしい/詳細は不明/書籍「チェルノブイリのファントム」)。またこの事故現場は狭い場所であったこともあって、臨界が終息したあとも重機が入ることはできず、土嚢積みも人力で行われた。

関連リンク:朽ちていった命―被曝治療83日間の記録
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