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日本人が築いてきたもの壊してきたもの (新潮OH!文庫) 

日本人が築いてきたもの壊してきたもの (新潮OH!文庫)
日本人が築いてきたもの壊してきたもの (新潮OH!文庫)

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ものづくりが脚光を浴びる中、形あるものはいつの日か取り壊さねばならない。
東京をはじめ、都市の再開発で新しくできるビルなどの建物の前には古い建物が解体されているのだ。
そんな解体屋さんのお話。

もともとものづくりに関心があるが、この本書の書名「日本人が築いてきたもの壊してきたもの」の「壊して」の部分に敏感に反応したのだった。壊してきたものとは…?

この本の主人公、高野工業所の社長 高野氏は、戦前・戦中は腕のいい溶接工として働き、戦後は東京で整理(廃材のバラシ)から解体へと職を変えていく。海軍工廠や軍需工場の解体から朝鮮戦争後の米軍戦車の解体。火力発電のボイラー、水力発電の導管。炭鉱施設。米国から輸入した古エンジンをキューポラに入れるための解体。新潟地震で壊れた石油タンク解体、千住火力発電所のお化け煙突の解体、都電車両や帝国ホテルライト館(旧館)の解体。製鉄所の平炉に高炉、石油ショック後の石油プラントの解体。自動車工場のライン、三菱造船横浜ドック、焼酎貯蔵タンク、後楽園のジェットコースター、原発建屋(炉ではない)、航空研の風洞用タンク、大江戸線などのシールド掘進機にディズニーランドのスカイウェイまで。解体の裏に日本現代史が見え隠れする。

そもそも建物や設備は地震や風雪、さらに経年変化などに耐え壊れないように作られているわけで、これを解体することはむずかしいことは想像できる。それに巨大設備なら解体方法や手順も考えねばならず、これといった決まった方法もないまま、さらに環境的な制約も受けながらの解体はむずかしかったらしい。また明らかに3K職場であるため、最近では後継もできないとのこと。今や日本も高度に都市化が進み、何かを壊さないと新たに何かを作れない状況だから腕のいい解体屋さんは大切だということが読むとわかる。

解体はただ壊すだけではないことがわかる。一例を示すと、この本の掴みとなる東京タワーだ。
先に書いた朝鮮戦争で使った米軍戦車だが1両30~40トンで総数90両。トン数にして3000トンを超えるが、請け負った1953年の米国からの対日屑鉄輸出額は8500トンであったというからビッグビジネスだったわけだ。

しかし当然ながら戦車はただの鉄でできているわけではなく、砲弾に耐えられるよう特殊鋼で作られている。さらに重い。これを戦車の中から酸素を使って切断していく作業だが、みんな職人気質なので教えてくれ、などと言わず試行錯誤と盗み見で進めたそうだ。そして解体された戦車は炉に入れられ、その一部が東京タワーのアングル材となったとのお話。

ちょっと話は逸れるが、本書の東京タワーのところでタワーてっぺん、45cm四方に立って真下を撮影した写真は貴重です。

環境やリサイクルが話題になる昨今、使われる材料だけでなく、解体しやすく再利用できるような製品が作られるようになっています。例えば富士フイルムの「写ルンです」はラボ店で回収され、富士フイルムの足柄工場で使えるものはそのまま再利用。キズなどでそのままでは使えないものは粉砕されてリサイクルされます。そして再び新しい「写ルンです」となって販売されている。まさに右から古い「写ルンです」を入れると左から新しい「写ルンです」がでてくる工場です(ほとんど無人だし)。

樹脂製品も裏側をみると材質が刻印されています。これだけリサイクルが気遣われていますが、実際はなかなかむずかしいようです。特に産廃はリサイクルできないものもあり、廃油や塩素系洗剤に酸、アスベスト、医療関係の感染性廃棄物、コンクリート。そういえば最近はコンクリートの建物は減りましたね。

先に書いた原発の炉については解体を研究中であること。基本的には廃炉したら炉の中に廃棄物を入れ原発敷地内に埋め、その上に新たな炉を作る計画らしい。廃炉と原子炉の両方の管理が一括してできるとのこと。

今の日本では、新しく建物や施設、モノができるということは、古い建物などが解体されるということでもある。ものづくりは解体されることも考えて作られる時代になったということがわかる一冊です。


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