FC2ブログ

「ぞうれっしゃがやってきた」 

ぞうれっしゃがやってきた (絵本ノンフィクション 23)
ぞうれっしゃがやってきた (絵本ノンフィクション 23)小出 隆司 箕田 源二郎


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

『長かったせんそうは、やっとおわりました。』

以前、上野動物園で実際にあった「かわいそうなぞう」について書いた。
今度も実際にあった名古屋の東山動物園の話。

東山動物園にはもともと1頭の象がいたそうですが、戦争の足音が聞こえてくる頃、木下サーカスも戦争を心配して4頭の象を動物園に譲渡した。その象の物語。

戦後、日本中の動物園から大きな動物は姿を消し、日本で象を飼育していた3つの動物園のうち東山動物園の2頭だけ生き残った。

この象を東京でもみたい。
東京の子どもたちが名古屋まで園長に請願しにきた。そして貸すことはできないが、子どもたちが名古屋に来たらいい。そういうことで臨時の列車が仕立てられたのが象列車だ。

ここまでの道のりは長かった。

上野動物園同様、日本中の動物園で動物たちが殺されていった。
東山動物園でも軍の要請を断りきれず一部の猛獣を処分。それでもライオンの数頭は満州の動物園で引き取ってもらうなど、園長はじめ動物園側の動物を処分させないという努力は必死に行われていた。

絵本には書かれていないが、戦火が激しくなると軍だけでなく市民からも処分の声が上がったらしい。絵本の中では動物園を守る警護の人(警防団か)たちが園長に迫り、

「人間がだいじか、動物がだいじか、どちらだ、ひこくみんめ!!」

という下りがあるが、恐らくは世論の一致した意見だったのだろう。この時点で軍が動物たちを殺しただけでなく市民も一緒になって殺したことにならないだろうか。警護の人たちは、逃げ出した猛獣から市民を守るために配されていたのではないかと想像する。

しかし同情してくれた人たちもいた。
動物園は軍の管理下になり軍馬がやってきた。軍馬には当然餌があり、いつしか置場が象舎の通路に積まれるようになった。飼育係は象の餌に難渋していたのでこっそりこれを盗んで象の餌としていた。

わざわざ象舎に軍馬の餌を積んだのは軍の獣医による指示であり、飼育員が盗むのを兵も見て見ぬふりをしたという。またわざと餌を忘れたままにしたこともあったという。

苦しめられていた軍の中に理解者がいたことは飼育員が知ることはなかったが、見えないところで支えてくれた人たちがいたのは事実だったようだ。

こうして終戦を迎え、象を東京へという話になったわけだ。
廃墟で娯楽もなかった時代、象がどれほど子どもたちを楽しませたことだろうか。今を振り返るとどうだろう。

この象列車も容易に運行できたわけではなかった。
もともと象を東京へ貸すという話だったが、象は群れで生活するため1頭ずつにすると暴れてしまい到底貨車に1頭ずつ乗せることができなかった。また当時はGHQによる統治下。国鉄がおいそれと臨時列車など走らせない時代。国鉄職員の度重なる請願で許可が下りた。

戦争中、大人たちは「動物たちを殺せ」と言い続けた。生かしておくことは非国民だった。調べると動物園の猛獣だけでなく、家で飼っている犬や猫まで殺されたらしい。お国のために鉄などと同じく供出したというのだ。供出しなければ非国民。

目の前で撲殺された例もあった。皮を剥がれて毛皮にされ、肉は食用か肥料にされた。
人間の食料も少ない中で犬や猫の餌があるのか。犬は野犬化しさらに狂犬病の薬もなくなって危険だ。

ここでもう一度考えてみる。
本当に大人たちも動物たちを殺せと思っていたのか。本当は、心の中ではそうは思っていなかったのではないか。家族同様に暮らしていた犬や猫まで殺されるとは思っていなかったのか。それとも殺されたからこそ動物園の動物も殺せと言ったのか。

誰も止めようとしなかったし止められなかった。一部の思い込みの「正義」のために。
どうすればよかったのか。匝には答えが出ない。
あえて言えることは、戦争を始めなければよかった。または引き際を誤らなければよかった。ということだろうか。


国家の偉大さや道徳的な進化の度合いはその国が動物をどのように扱っているかで判断できる
(マハトマ・ガンジー)

東山動植物園:2. 開園、そして戦争

旭山動物園:もう一度ゾウを飼って!

戦時中の動物園:名古屋市東山動物園/猛獣処分の流れ

戦時中の動物園:軍需省通達「犬(猫)の献納運動」

PJニュース:62年前の悪夢…国家による犬猫の大虐殺

帝國ノ犬達:犬の昭和史(戦中)

スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://eniguma.blog85.fc2.com/tb.php/2242-d3ec066b