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官邸から見た原発事故の真実 

官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機 (光文社新書)
官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機 (光文社新書)田坂広志

光文社 2012-01-17
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私たちは“今”の生活水準を維持、いや、向上させるために子供の将来にとんでもないゴミの遺産を積み上げているのではないだろうか…。

読み終えてそんなことを感じさせられた。

東日本大震災以前、匝は原子力発電には消極的だったが電力に占める原発の割合から考えても直ちに廃止するのは現実的ではないと考えていた。また原発用地は過疎地を狙ったもので、財政支援や雇用対策などを打ち出されれば地元としても反対しにくい場面もあろう。その意味では原発新設に反対するならその土地に生活するくらいでないといけないとも考えていた。原子力政策と過疎地政策の2本柱なのだと。

しかしいずれは原発は頓挫するとも思っていた。原発から出た使用済み燃料を再処理して、ひとつは燃え残ったウランの回収後、再度加工して原発で使う。もうひとつは原発内でできたプロトニウムを回収しプルトニウムのための原発=高速増殖炉で使う2つのサイクルがあります。これを核燃料サイクルというのだそうです。

ところで高速増殖炉の増殖とは、燃料のプルトニウムのまわりにいくらでもあって核分裂しない…つまり発電に使えないウラン238というものを置いておくと、プルトニウムが核分裂すると原発にない高速の中性子線によってウラン238がプルトニウム239(核燃料)を新たに作り元の燃料よりも増えることを意味する。

すると燃やした以上に核燃料が新たにできる。まさに夢のエネルギーだった。

しかしその夢は遠い将来の夢になりつつあったのだが、どちらかというと近い将来の悪夢になるだろうと思った。なぜなら技術的な問題で高速増殖炉は試験運転もままならず、また原発から出た使用済み核燃料の処理施設(六ヶ所村)もトラブル続きなのだ。原発は稼働しているのでどんどん高レベル放射性廃棄物が溜まる一方で近い将来パンクすることが見えつつあったのだ。

そんな時に大震災が発生し、福島第一原発は大きな損傷を受ける。

この著者は原子力の技術者で、原発事故後内閣参与として原発事故の対策に奔走する。
福島第一原発では1、3、4号機が水素爆発により損傷。ここで問題となったのが原子炉内には燃料がなく運転休止中だった4号機だ。福島第一原発は冷却用電源が喪失していた。4号機の燃料は取り出され原子炉横の冷却プールで冷やされていたがこの水位が下がっていた。もう一度大きな地震や津波があれば、4号機建屋が崩れプールの水が抜けてしまったなら…。ある一定の時間が経てば使用済み燃料が熱で崩れ原子炉の外で臨界状態となってしまったであろう。そうなれば首都圏三千万人の避難が現実になってしまう。

4号機のプールは東京電力による突貫工事が行われ、2011年秋には補強工事が終了したそうだ。
とにかく最大の危機はどうにか去った。あとは冷却が滞らないようにしっかりすればよい。

…とはいかないそうなのだ。

原発再稼働派と原発反対派。相反する二つのグループに共通して重くのしかかる問題。
それが高レベル放射性廃棄物の処理問題だ。

冒頭に書いた近い将来、原発から排出される高レベル放射性廃棄物がパンクする。というのが、今や目の前で山のような高レベル放射性廃棄物「福島第一原発」ができてしまった。そしてこの事故によって原発関連施設の建設はできなくなるだろう。それによって再処理施設も高速増殖炉も動かすことができなくなれば…、日本国中の50以上の原発に保管されている使用済み核燃料をどう処理するのか。

問題を先送りしてきたツケを今、最悪の状態で払わなければいけなくなったようなのだ。
少なくとも将来何の関係もない子供たちがツケを払わずに済みそうなのだけが幸いに感じる。

著者は本の中で『政府が答えるべき「七つの疑問」』を挙げている。

1)原子力発電所の安全性への疑問
2)使用済み核燃料の長期保管への疑問
3)放射性廃棄物の最終処分への疑問
4)核燃料サイクルへの実現性への疑問
5)環境中放射能の長期的影響への疑問
6)社会心理的な影響への疑問
7)原子力発電のコストへの疑問

これらは政府や電力会社などが今まで「見なかった」ことにしてきた事柄だ。
著者は、国民からの信頼を取り戻すための努力を政府に求めている。
また政府や政治家、財界、産業界の多くがいまだ抱いている「楽観」、「希望的観測」を戒めている。

と、同時に国民にもこんなメッセージを送っている。

『「自分以外の誰かが、この国を変えてくれる」という「依存の病」であり、この病をこそ克服しなければならないでしょう』

続けて「英雄を必要とする国は不幸」という戯曲の言葉も載せていた。

日本を変えるのは誰かではなく自分の行動なのだ。これはもっと国の運営に参加する。参加できるしくみを求める。そこからの行動が必要なのだろう。そのためにはどうしたらいいのか、匝だけでなく国民一人ひとりに問いかけられ答えを行動にうつさなければならないのだろう。

どうしていったらいいのか。選挙で民意を表すだけでなく、もっと行政や政府に関与するとは…。
自分で答えを見つけられるだろうか。

もうひとつ、いくら技術的に完璧であってもそれを取り巻く「人的、組織的、制度的、文化的問題」があればどんな想定をして技術的な対応をしてもダメだと。扱う人が基本に則らない、組織的に事なかれ主義だ。などの問題があってはならないと。そして安全と経済効率とを天秤にかけてはならないと。

たしかに使い方を誤ったり、隠し事するような組織や風土では安全は保てないだろう。予算から想定を下げることもやってしまいそうだ。これは自らにも言えそうだ。安全の前には予算不足や怠惰な心はあってはいけないんだと考えるいい機会になった。

最後に印象的だったのは…、
『「原発に依存しない社会をめざす」というビジョンの可否以前に、このままでは、「原発に依存できない社会」が到来するのです』

原発賛成も反対もない、今まさに手に余るゴミ処理をするために国民全員に重たい課題が突きつけられたのは確かなようだ。

この本に先立ち2011年10月14日に著者の田坂さんは日本記者クラブで「福島原発事故が開けたパンドラの箱 野田政権が答えるべき国民の7つの疑問」という講演を行った。関心ある人は、その動画が公開されているのでぜひ一度視聴してほしい。

日本記者クラブ:田坂広志 前内閣官房参与 2011.10.14





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