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海に降る 

海に降る海に降る
朱野 帰子

幻冬舎 2012-01-13
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深い海に降る雪は
今日も静かにつもりゆく…

マリンスノー
それは海中でゆっくりと舞う雪のような白いモノ。
「マリンスノー」と名付けたのが日本人だと知る人は少ない。

この「海に降る」は、そんなマリンスノーから名づけられた潜水調査船のパイロットを目指す主人公“深雪”の物語だ。

宇宙飛行士についてはよく話題に出る。
初期のころの毛利衛さんや向井千秋さん。最近では野口聡一さんや古川聡さんなどお名前や顔をテレビなどで見聞きしたこともあるだろう。
しかし潜水調査船のパイロットが誰だか知っている人はまずはいない。そもそも世界でも最も深く潜れる深海調査船(しんかい6500)を日本が保有していることを知る人も少ないのではないだろうか。

そんな日本の潜水調査船を保有する海洋研究開発機構が物語の舞台になっている。

離婚で離れ離れになった父を慕いつつ、父が建造に携わった“しんかい6500”のパイロットを目指す天谷深雪。謎の深海生物を追いつつ亡くなった父の思いを継ぐ高峰浩二。

深雪は突然降りかかった個人的な事件で閉所恐怖症となりパイロットへの道が閉ざされていく。パイロットとは何を信頼し何のために深海に向かうのか。上長や同期との関わりから、あるべき自分の姿を見つけていく。
一般人である高峰が深海生物を自分の目でみつけることなど不可能。彼がその目的のために取った手段は大胆な方法だった。

物語は次から次へとテンポよく展開され、そのため飽きばかりかどんどん引き込まれる。そして広く蒔かれた伏線は最終的にはすっきりと収束する。また実際の技術的な話だけでなく、特に最近の社会のありようがそのまま物語に反映されているため、現実の話ではないかと錯覚しそうなほどだ。

一番印象に残ったのは、高峰が大それた事件を起こした後の理事が諭すところだった。
要約すると次のようなことだ。

---
未知の領域を明らかにしたいというのは人間の欲求であり研究者の本能でもある。そのエネルギーがなければ深海探査技術はここまで進化しなかった。
しかし戦後最初の潜水調査船を建造したのは豊富な蛋白資源を探し、飢えに苦しむ国民を救うためだった。
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著者が物語の中で何を一番伝えたかったのか。私にはこの部分だったのではなかったかと考える。

今、我が国は長く続く景気低迷と社会保障費の増大で国家予算も苦しい。どうしても予算配分は厳しく考えざるを得ない。そして目先のことに囚われてしまい、10年、20年も先のことまで気が回らない。そこを批判する人もいるが、目先のことを疎かにしていいというわけではないだろう。

少し話は変わるが、昆虫記のファーブルが貧乏で夕食のお金しかないところを、あえて食費に充てずに読みたかった本を購入するのに充てたという話。小泉政権時に米百俵の話もあった。

そこはバランスだと思うのだ。教育や科学が先か、経済や技術開発が先か。そういう二元論で考えることではない。そんなことを読みながら感じた。

ここまで書いたのだが、この本は普通に読み物として楽しめます。どちらかというと軽い本です。サッと読めますが、深く考えることもできるテーマも含まれています。そういった点でもお勧めできる書籍です。



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